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3. シーステート
さて、「みらい」の仕様書にはブイハンドリングはシーステート4まで、CTD採水はシーステート5まで安全に行えることと書かれています。
この「シーステート」とは海洋波を「風浪」と「うねり」に分けた場合の「風浪」の平均波高(1/3有義波高に相当)をクラス分けしたものです。シーステート5の「風浪」の平均波高は2.5〜4mです。これは風速と一定の関係があり、厳密ではありませんが、陸岸がら遠く離れた外洋において風速14〜17m毎秒の風が吹いていると考えることができます。
このような海象が実際の海域でどの程度の頻度で出現するかですが、現在利用できる最新のデータとしては、船舶技術研究所の「北太平洋の波と風」の海象データベースがあります。これは船舶通報のほか、気象観測ブイの観測データと「HINDCAST」という新しい手法によるデータを比較したものです。
これにより年間平均波高が最も大きい北太平洋亜寒帯中央部(図一2の斜線部)の冬季の波高累積頻度(図一3の実線)を見ると、シーステート5を超える海象は2割程度に過ぎません。それに対して観測船の元機関長その他から実際の海域はもっと荒れてるはずとの指摘がありました。

 

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図−2 日米の気象観測ブイの配置

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図−3 北太平洋中央部の波高累積頻度

 

これは船舶通報が一般商船の目視観測であるため、船速低下が著しい荒天域は避けているためではないかと思われます。もしブイの計測値があればいいのですが、残念ながらいずれのブイも沿岸域に設置されていて海象条件が厳しい海域にはありません(図一2の丸数字)。
唯一、HINDCASTの値が得られており、それによると船舶通報の場合よりも多少海象条件が厳しくなり、シーステート5を超える頻度は3割程度となります(図−2の破線)。HINDCASTは全地球気象モデルから導いた気圧配置(船舶等の観測値も同化されている)から海上風を計算し、波浪モデルによって波高を導いたもの

 

 

 

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